1歳半の次男と朝の散歩中
100円ショップの大きなビニール袋とカメラを持った初老の男性に
小田原城の石碑の場所を尋ねられた。
城の写真だけでは後でわからなくなるので石碑を撮りたいとのこと。
大体の場所をお教えすると男性は近道すべく道なき斜面を登っていった。
気になっていると城内で再開でき立ち話が始まった。
寅さんのような親しみやすい雰囲気に吸い込まれるように話を聞いていると
もう一ヶ月くらいも旅をしていること。
昭和16年生まれだということ。
そして大きなビニール袋に入っているのが妻の遺影だということが分かった。
「ほれた弱みよ。一緒に旅してますねん。
恥ずかしいやろ。だからこれに入れてますねん」
妻が19歳の時にお嫁さんにもらった馴れ初めなどを聞いていると
胸がきゅんとした。
「帰ったら精密検査を受けますねん。これが最後の一人旅」とも。
ビニール袋は日常的で飾り気がないもの。
一番大切なものはいつもそばに当たり前のようにあるものなのかもしれない。
次男の手をぎゅっと握った。
(小田原市在住の主婦の文面です)


